大判例

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最高裁判所第二小法廷 昭和37年(オ)956号 判決

上告人 溝越栄次郎 外一名

被上告人 国

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人らの負担とする。

理由

上告代理人溝越清一郎の上告理由について。

原判決の確定したところによると、原判示の国用林野を管理していた宮城大林区署は、右園有林野にその周辺を囲繞されて隣接する字大又五四五番の八の土地につき原判示の手続を経て境界査定処分を行い、右処分につき法定の期間内に訴願の申立がなかつたため、右五四五番の八の土地と前記国有林野との境界が原判決図示の線であることに確定したことが明らかであつて、所論のような事実があつても、それのみでは右査定処分が当然無効であるとはいえない。結局において右と同趣旨の原判決は正当である。原判決には所論のような採証法則違背、審理不尽の違法はないから、論旨は理由がない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判官 河村大助 奥野健一 山田作之助 草鹿浅之介)

上告代理人溝越清一郎の上告理由

本件係争地たる大又五四五番の八の土地は上告人等の所有であり、上告人等主張のように、上告人等主張の個所に位置して居つたことは原判決理由の(二)により明かである。

ただ其(三)記載によると、明治三十九年六月一日頃本件土地の周辺を囲繞する国有林野を管理する宮城大林区署が、本件土地の当時の管理者である福原村長大月衡宛に同月八日官民有地の境界査定を行う旨並に之に立合われたき旨の通告を発したが、同村長は右指定期日に前記査定処分に立合しなかつた、のみならず国有林野法又は訴願法定の期間内に異議の申立もしなかつたので、結局本件五四五の八の土地の位置、面積は訴状添付図示の如くに移動変更し確定したのであると云ふにある。

乍併上告人の云はんと欲するところは右の如き行政処分自体無効であつて何等効力を生ずるものでないと云ふに外ならない。

何となれば、上告人等の有する本件土地の面積は台帳反別でも一町五反四畝十八歩(乙第二、三号証、甲第八、十一号証)であるのに、訴状添付図示によれば、上告人等の有する土地の面積は僅か三反八畝十六歩(第一審判決理由の第一項の(三)御参照)に過ぎないこととなり、而かも従来の位置よりも地勢、地味とも劣悪な位置に移動されたことになる。(面積で約四分の一)

斯くの如き個人の財産権を著しく侵害する行政処分は、仮令形式的には適法であつても、実質的に重大且つ明白な違法の処分である以上当然無効であつて何等効力を生ずるものでない。最高裁昭和三〇年一二月二六日民集九巻一四号二〇七〇頁)

然るに原判決は事茲に出でずして、甲第四号証の一乃至五(境界査定関係書類)を採用し、訴状添付図示の如く確定したものと判示したのは、少なくとも採証の法則を誤るか或は審理不尽の違法があるものと思われ結局破毀を免れないと考ふ。(民訴三九四条)

以上

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